衣類乾燥機でいちばん多い失敗は、乾燥方式を決めないまま容量と価格だけで選ぶことです。ヒーター式とヒートポンプ式は、水分を飛ばす原理そのものが違います。その原理の差が、電気代・乾燥時間・衣類の傷み・置ける場所という4つの条件すべてに効いてきます。方式から決めると、選択肢は一気に絞れます。
先に結論
- 毎日まわす/2人以上ヒートポンプ式。本体は高いが、1回あたりの電気代がヒーター式の半分前後に収まります。
- 週末にまとめて/1〜2人ヒーター式の据置型。本体が安く乾燥も速い。排湿の逃げ道だけ先に確保します。
- 部屋干しを速くしたいだけ乾燥機より除湿機が合います。乾燥機は「洗濯物が全部乾く機械」として買うと外します。
判断軸1:乾燥方式は「熱を捨てるか、使い回すか」の差
家庭用の衣類乾燥機は、大きくヒーター式とヒートポンプ式に分かれます。この2つは、温風の作り方と、衣類から出た湿気の処理の仕方が違います。順番に原理を見ます。
ヒーター式:電熱線で空気を温め、湿った空気を捨てる
ヒーター式は、電熱線で空気を加熱し、その高温の風を衣類に当てて水分を蒸発させます。ドライヤーと同じ考え方です。仕組みが単純なので本体を安く作れ、風の温度をおおむね70〜80℃まで上げられるため、乾燥時間が短くなります。
問題は、湿気を含んだ高温の空気をどう処理するかです。ここで2つの方式に分かれます。1つは排気式で、湿った空気をそのまま機外へ出します。単体の据置型乾燥機の多くがこれです。もう1つは水冷除湿式で、水道水を使って湿った空気を冷やし、結露させた水を排水します。ドラム式洗濯乾燥機のヒーター式モデルに多い方式です。
排気式は、排出先の湿度が上がります。屋外へダクトを出せる設置なら問題になりませんが、脱衣所のような狭い部屋にそのまま排気すると、部屋の湿度が上がって乾燥そのものが遅くなります。水冷除湿式は室内が湿りませんが、乾燥のたびに水道水を使うため、電気代とは別に水道代が乗ります。
電気代の面では、ヒーター式には原理上の上限があります。電熱線は投入した電力をそのまま熱に変える装置で、1kWの電力からは1kW分の熱しか出せません。しかもその熱の多くを、湿気と一緒に捨てるか、水で冷やして捨てます。
ヒートポンプ式:除湿しながら、熱を回収して使い回す
ヒートポンプ式は、エアコンの除湿と同じ原理で動きます。庫内の空気を熱交換器でいったん冷やし、含まれていた水蒸気を結露させて水にします。水を抜かれた空気を、今度は別の熱交換器で温め直して衣類に戻します。この空気は機内を循環するので、湿気を外に出しません。
ここが効率の分かれ目です。ヒートポンプは冷媒を圧縮・膨張させて熱を「移動」させる装置で、投入した電力より多くの熱を運べます。空気を冷やす側で奪った熱を、温める側で再利用しているためです。同じ量の水を衣類から抜くのに必要な電力が、ヒーター式より小さくなります。これがカタログ上の電気代の差の正体です。
もう1つの利点は温度です。ヒートポンプ式の温風はおおむね60℃前後で、ヒーター式より低くなります。綿の縮みや化学繊維の変質が起きにくく、衣類が傷みにくい。一方で温度が低いぶん、同じ量を乾かす時間はヒーター式より長くなります。
弱点は3つあります。コンプレッサーと熱交換器を積むので本体が重く大きい。構造が複雑なぶん本体価格が上がる。そして熱交換器にほこりが溜まると効率が落ちるため、フィルターの手入れが前提の機械です。手入れをやめると、乾かない・電気代が上がるという形で必ず返ってきます。
ガス衣類乾燥機はヒーター式の親戚です。ガスを燃やして高温の風を作り、排気を屋外へ出します。家庭用で最も速い部類ですが、ガス栓の増設と排湿ダクトの工事が必須で、賃貸では基本的に選べません。
| 方式 | 乾燥時間 | 1回の電気代 | 衣類への負担 | 設置の自由度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヒートポンプ式 | 長め | 小さい | 小さい | 本体が重く大きい | ◎ |
| ヒーター排気式 | 短い | 大きい | 大きい | 排気先の確保が要る | ○ |
| ヒーター水冷除湿式 | 短め | 大きい+水道代 | 大きい | 給排水が要る | △ |
| ガス式 | 最短 | ガス代で別計算 | 大きい | 工事が必須 | △ |
方式を決めてから容量とサイズを見ます。逆にすると、置けない機種や電気代の高い機種を候補に残したまま比較することになります。
判断軸2:設置場所は「排湿・電源・耐荷重」の3点で決まる
衣類乾燥機は、置けるかどうかで候補が消えます。買う前に確認するのは寸法だけではありません。
1つめは排湿の逃げ道です。ヒーター排気式は、抜いた水分を湿った空気として吐き出します。その空気の行き先が要ります。窓や換気扇があり換気を回せる場所、または排湿ダクトを外へ出せる場所が条件です。逃げ道のない密室に置くと、乾燥時間が延び、その部屋の結露やカビの原因にもなります。ヒートポンプ式と水冷除湿式は排水で処理するため、この制約が小さくなります。
2つめは電源です。据置型の電気乾燥機は消費電力が1kWを超えるものが一般的で、アース付きのコンセントが要ります。同じ回路で電子レンジやドライヤーを同時に使うとブレーカーが落ちます。延長コードやタコ足での使用は、発熱の危険があるため避けてください。
3つめは支えです。据置型の乾燥機を洗濯機の上に置くには、専用の設置台か、壁面に固定する取付金具が要ります。金具を使う場合は壁の下地に固定できることが条件で、石膏ボードだけの壁には付けられません。棚板に載せる置き方は、運転中の振動があるため想定されていません。
ドラム式洗濯乾燥機なら、防水パンの内寸、給水栓の高さ、排水口の位置、搬入経路を確認します。排水口が本体の真下に来る場合はかさ上げ台が要ることがあります。玄関ドアと廊下の幅、階段の踊り場は実寸で測ってください。ここを測らずに買うと、設置できずに引き取りになります。
工事も設置台も難しい住まいなら、工事不要の小型モデルという選択肢があります。ただし性能の前提が別物なので、期待値を先に合わせる必要があります。
あわせて読む"工事不要の小型衣類乾燥機はどこまで使えるか"判断軸3:容量は「洗濯容量」ではなく「乾燥容量」で見る
洗濯乾燥機のカタログには、洗濯容量と乾燥容量が別々に書かれています。この2つは同じ数字ではありません。縦型の洗濯乾燥機は乾燥容量が洗濯容量のおよそ半分、ドラム式でも6〜7割程度というのが一般的です。洗濯8kgと書かれた機種で、一度に乾かせるのは4kg台という組み合わせが普通にあります。
必要な容量は、洗濯物の量から逆算します。目安は1人1日あたり約1.5kgです。2人暮らしで毎日まわすなら1回3kg前後、2日分をまとめるなら6kg前後になります。ここで見るのは乾燥容量のほうです。乾燥まで一度で終わらせたいなら、乾燥容量が必要量を上回る機種を選びます。
詰め込みは効きません。乾燥は、温風が衣類のあいだを通り抜けて水分を運び出す過程です。庫内がいっぱいだと衣類が動かず、風の通らない塊ができて、そこだけ生乾きで終わります。庫内の7〜8割までが実用上の上限です。容量ぎりぎりまで入れる前提で機種を選ぶと、結局2回に分けることになります。
逆に少なすぎても効率は落ちます。1〜2枚のために大型機を動かすと、庫内を温める電力が無駄になります。洗濯機側の容量選びも同じ考え方です。
あわせて読む"一人暮らし向け小型洗濯機の選び方"電気代は自分で計算できる
方式の比較は、金額に直すと判断しやすくなります。計算式は次のとおりです。
1回の電気代(円)= 1回あたりの消費電力量(kWh)× 31円
この31円/kWhは、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が2022年に改定した電力量料金の目安単価です。メーカーが年間電気代を出すときにも使われている数字なので、機種をまたいで比較するのに向いています。
カタログに1回あたりの消費電力量が載っていない場合は、消費電力と運転時間から出します。
1回あたりの消費電力量(kWh)= 消費電力(W)÷ 1000 × 運転時間(h)
仮に、消費電力1,250Wのヒーター式据置型で、5kgを2時間かけて乾かすとします。1,250 ÷ 1000 × 2 = 2.5kWh。31円を掛けて、1回あたり約78円です。同じ量をヒートポンプ式が1.2kWhで乾かすなら、1回あたり約37円になります。差は1回41円です。
ここを年間に伸ばします。毎日1回まわすと、78円 × 365日 = 約28,500円と、37円 × 365日 = 約13,500円。差は年間およそ15,000円です。週2回なら差は年間およそ4,300円まで縮みます。ヒートポンプ式の本体価格差を何年で回収できるかは、まわす回数で決まります。毎日まわす家庭では数年で逆転しますが、週末だけならヒーター式の安さが残ります。
上の金額は、消費電力と運転時間を仮に置いた計算です。実際の機種を比べるときは、カタログの数値を式に入れ替えてください。ヒートポンプ式は運転中に消費電力が変動するため、掛け算より「1回あたりの消費電力量」の欄を使うほうが正確です。
乾燥機を買う前に、除湿機で足りないかを確かめる
部屋干しが乾かない、という悩みで乾燥機を検討している場合、除湿機のほうが合っていることがあります。役割が違うからです。乾燥機は衣類から直接水を抜き、除湿機は部屋の空気から水を抜いて、間接的に洗濯物を乾かします。
速さでは乾燥機が勝ちます。ただし除湿機は本体が安く、洗濯物がないときも部屋の湿度対策として働きます。乾燥を1時間台で終えたいのか、朝までに乾いていればいいのかで答えが変わります。
あわせて読む"除湿機と衣類乾燥機、部屋干しにはどちらが効くか"買うタイミング
衣類乾燥機は1万円台から10万円超まで幅があり、金額が大きいほど楽天のセールでの差が出ます。買い回りに乗せるなら、この本命1点を先に置いてから、残りの店舗を必要な日用品で埋める順番にしてください。乾燥機のような高額品が総額の土台になるので、店舗を先に数えるより効率が良くなります。
買い回りの特典は店舗数ではなく合計購入額にかかるので、10店舗を埋めること自体に価値はありません。この基準の使い方は別記事にまとめています。
あわせて読む"お買い物マラソンの買い回り|10店舗の埋め方"設置台や工事が必要な機種は、販売ページで設置サービスの有無と料金、リサイクル回収の扱いを確認してください。ショップごとに条件が違います。
よくある質問
洗濯乾燥機1台と、洗濯機+乾燥機の2台は、どちらがいいですか
置き場所が確保できるなら、2台のほうが日常の使い勝手は上です。洗濯と乾燥を同時に走らせられるので、2回分をまわす日に待ち時間が出ません。故障したときも片方だけの買い替えで済みます。1台にまとめる利点は、設置面積と、移し替えの手間がないことです。ただし乾燥中は次の洗濯ができません。
乾燥機にかけられない衣類はありますか
あります。洗濯表示に乾燥機不可のマーク(四角のなかの円に×)がある衣類は、縮みや変形が起きます。ウールなどの動物繊維、レーヨンやキュプラ、装飾やプリントの付いたものは避けるのが基本です。高温になるヒーター式ではこの影響が出やすくなりますが、低温のヒートポンプ式でも表示が不可なら対象外です。
縦型洗濯機の「簡易乾燥」で乾きますか
乾きません。簡易乾燥(送風乾燥)は、ヒーターを使わず室温の風を送る機能です。脱水後の水分を少し飛ばして部屋干しの時間を短くするもので、着られる状態まで乾かす機能ではありません。乾燥まで終わらせたいなら、ヒーターかヒートポンプを積んだ乾燥機能付きの機種を選ぶ必要があります。カタログの「乾燥容量」の欄が空欄か「簡易乾燥」となっている機種は、この区分です。
あわせて読む"布団乾燥機の選び方|マット式とホース式" あわせて読む"アイロンと衣類スチーマー、どちらが向くか"